中央アルプス周辺 河川工事レポート

このレポートの経緯

2004年の台風23号は信州の河川に大きな爪痕を残しました。
魚も壊滅的な被害が出て、生存確認に行くも殆ど生物反応が有りません。
河川工事が4月以降始まりましたが、かなり大がかりな工事の為一抹の不安を「脱ダム宣言」を訴えている田中県政に投げかけました。
豊かな信州の自然を取り戻したく行動を始めましたので、そのリポートを公開いたします。
皆さんの地元でも同じような事が沢山あると思いますが、こちらでの動きをご参考頂ければ幸いです。

今回は信憑性を重視するため敢えて実河川名と一部実名を公表させて頂きました。

第一段階 (2005/04 中旬)

天竜漁協内の小黒川、小沢川、小横川川、横川川については護岸が崩れたり倒木が多くかなりの被害を確認。
竿を出してみるが、生物反応が極端に少ない。
河川改修工事が始まっていたが、川底がならされとても生態系を考慮していると思えなかった。

第二段階 (2005/04 中旬)

工事の工法に不安を抱き、天竜漁協に工事業者へどんな風にしたら良いか指導をして欲しいとメールを出す。
しかし、漁協からは何も返事がなかった。

第三段階 (2005/04 下旬)

このまま指をくわえていても仕方ないので、「脱ダム宣言」を訴えている田中県政なら何かしら行動してくれるかも知れないと望みを賭けて「信州・フレッシュ目安箱」に下記のような内容を送った。

1:3面護岸などをしないで自然に配慮した工事を実施して欲しい
2:子孫に自然を何とか残したい

第四段階 (2005/05/13)

長野県土木部長より目安箱への返事を頂きました。
護岸工事は「環境保全型ブロック」などを用いて自然に配慮するなどの丁寧な返事を頂きました。
しかし、自分が見た現状とはちょっと違うような気がしたので土木部にお願いの内容を返信しました。
2005/05/13 県土木部より頂いたメールの内容
2005/05/14 小生が返信したメールの内容

第五段階 (2005/05/18)

伊那土木事務所の課長さんより突然電話が来ました。
現在工事のまっただ中なので最終的な工事の内容を説明したいのと、どんな風にしたら自然に良いかをご指導いただきたいので是非河川を見ながら半日くらい時間を作って欲しいとの内容でした。
とても感じの良い方で何となく好感触?
取り合えず5/19午後2時に横川川で会うことを約束した。

直ぐに天竜漁協に電話をしてこの事を伝えました。
一応漁協としても土木事務所には色々指導しているという事でした。
しかし、営利団体同士なのでどうしても話がかみ合わない面もあるので、一般の方から訴えかけて貰えるとまた違うと思うのでという話をしました。
本来は漁協の方にも一緒に立ち会って欲しいと言うつもりであったが、今回は敢えてその事はお願いしませんでした。
漁協川からすれば、魚の被害などを中心に自分たちの管理している魚にとっての話だけになってしまいそうなので。
小生は、釣り人である前に自然を愛する者なので、周りの植物、川の中の全ての生物に対して話をしたかったのです。その環境が有って初めて魚にとっての環境も揃うわけで、これだけ守れば良いという物は無いと思っているからです。

第六段階 (2005/05/19)

ちょっと早めに出て川を一回りしようと約束の15分前に川に現着。でも約束した場所に3台車が有り、人が沢山居たので1本手前の道を曲がって上流に向かったが、直ぐ上の橋から戻り行ってみるとやはり土木事務所の方達であった。
早速挨拶を交わし、自然環境を配慮した工法の説明を聞いた。その話し方より真剣に自然について考えて居るんだなぁと受け取れました。
しかも、一県民の問いかけに7人もの方が案内と説明をしてくれました。それも予定表もちゃんと作ってありました。
これにはさすがに小生も恐縮しっぱなしであります。
伊那土木事務所が作ってきてくれた予定表
小生が土木事務所に渡した要望書
現場の写真
小生の意見や川の周りに有る植物の役目、魚などの習性や補食サイクル、魚が天敵から身を守るために大きな石や深場が必要、川底の石が白泡を立てて酸素を補給し水が生きるなどの話も真剣に聞いていただき色々論議を交わすことが出来ました。

今回の改修工事は相当な被害のため国の予算が必要になり、昨年は新潟の地震災害なども重なり工事の着手が遅れたそうです。
漁協からは、鮎の放流、アマゴ、岩魚の稚魚放流のスケジュールが立たないと言われていたり、田んぼにまず水を供給しなければならないなどの理由から工事のスケジュールがきつく、護岸工事が済んでから最後に川に手入れをするとの事です。
順番的に確かにそうですね。
予算も限られているとの事なのですが、流れてきた石をちょっと気遣って配置して貰うだけで自然は帰ってくるなどの話もさせていただきました。

今回前向きに現場視察をして頂いた伊那土木事務所の方達に感謝の念で一杯です。
田中県政のお陰かハッキリ判りませんが、信州もようやく自然環境を配慮した工事を考えるようになったそうです。
まだそういうことを始めたばかりなので何が良いか判らないのでこれからも状況を報告して欲しいとも言われました。
自然再生は難しい面があると思いますが、小生も少しでもその役に立ちたいので、これからも現場の写真などを送ったり、意見を送ったりしていきたいと思います。

音無川 河川工事後レポート (2005/05/25)

諏訪東部漁協管内の音無川は、約3年前に大がかりな河川改修工事が行われた。
今回は、この河川の原在位の状況をレポートします。

写真を見ていただくと一目瞭然ですが、段差の大きい川で上手く落差を打ち消す工事がなされている。
魚が遡上しづらい大きな堰堤は設けずに、小さな落差を沢山作り川の流速を落とす役割をしている。
そして、ちょっと段差が大きいところは絶壁のコンクリート仕上げにしないで大きな石を斜めにコンクリートで固めた物になっており魚が遡上しやすくなっている。

何よりも感心したのは、無造作に敷き詰められた大きな石。大水の時に多少流されたりしてはいるが、それが現在は自然の造形となっている。
護岸は石をベースとした護岸になっていて今では雑草が生えている。コンクリートだけで固めた物よりとても自然に感じる。
その為、その雑草や木から落ちる虫や水生昆虫が沢山居て、水生動物の餌も豊富。上手く色のサイクルが出来ているようだ。

全てが良いかどうかは小生には判断できませんが、現在自然が回復しているのは間違いないです。
このような工事がこれからも増えていくことを願っています。
音無川の現在の写真

河川工事中間レポート (2005/07/19)

7月前半に現地へ工事の状況を確認しに行ってきました。
まだまだ手を付けてない所や工事中の所が殆どです。
一部終わったと思われる所では「やはり。。。」と思われる場所も有りました。まだ最終段階とは言いがたいと思うので今後の状況を見ていきたいと思います。
工事途中の写真
この調子で進んでしまうのかな?と不安に感じていたら土木事務所からアクションが有りました!
7月の半ばに土木事務所の設計担当者から電話が入りました。
河川工事の考え方と、施工方法を簡単に書いた図面を送るので見て欲しいとの事。
その後、土木事務所・天竜漁協・小生の三つどもえで河川にてアドバイスを頂きたいとの申し入れが有りました。
その書類を公開いたします。5ページ有りますが是非ご覧下さい。
次回その様子を報告いたします。
施工方法の提案書

河川工事視察レポート (2005/08/23)

今回は、伊那土木事務所の方達と一緒に視察と説明を受けに横川川、小黒川、中田切川へ行ってきました。
一部終了している所も有りましたが、鮎が解禁になっている事もあり漁協からは禁漁まで工事を中止して欲しいとの依頼が有ったようです。
やはり、稼ぎ頭の鮎釣りを優先するのは営利団体で有るがゆえ仕方ないと思うが、もう少し川全体、自然について考えて欲しいというのが小生の本音です。
こちらはこうやって良い川に戻る様出来る限りの時間を割いて土木事務所の方達と色々とこうした方が良いんじゃ無いかとかやっているのに現場には出てきてくれない。ちょっと残念でした。

一方土木事務所は、一市民の声を真剣に聞いてくれ良い川にしたいという気持ちは、今まで伊那土木事務所の方達との接触でとても感じています。
前回頂いたた施工方法の提案書を各業者に渡し、環境に配慮した施工を業者を集めて説明して頂いた様です。
これだけ大きな被害を受けたので直ぐに結果は出ないと思います。工事が済んでも自然の力は大きく結果的に効果が無かった工事も有ると思います。でも前向きな気持ちが有れば、試行錯誤で将来変わってくると思います。
既に工事が終わった所で色々配慮していただいた所も時間が経つと簡単に壊されていたところも有りました。
しかし、これを糧にもっとやるところは大胆にやりましょうという意見も頂きました。
最終的には施工するオペレーター次第と言う所があるのが現実ですが、小生も今後気が付いた所は報告して次回の改修工事等に反映できる様にしたいと思います。
今回視察した現場の写真